『聖母ご出現の日』をルルドで
ルルド巡礼と黙想の旅に参加して
2010年2月
ルルドにて
谷間に響きわたる祈りの歌声。これが天に届かないわけはないと感じ、体が震えた。
 先月、思い叶い、フランスの聖地を巡礼する機会に恵まれた。ピレネー山麓の小さな町、ルルド。19世紀半ば、後にカトリックの聖人となる貧しく無学の少女、ベルナデッタのもとに聖母マリアが十数回にわたって現れたという。
 その地にわき出た泉の水は不治の病も治す奇跡の水として知られる。人口約1万5千人の町に世界中から年間500万人ともいわれる巡礼者が訪れる。ただ、人はやみくもに奇跡を求めているのではない。神と心で対話をする。「神のおぼしめしであれば(願いが叶いますように…)」。祈り、水をくむ。
 私が行った日は、聖母出現の記念日。3万人以上の巡礼者がいた。フランス人、イタリア人、ギリシャ人…。あらゆる国々の人々がろうそくを手に、アヴェ・マリアの聖歌を合唱しながら練り歩く。その行列に身をまかせながら、日本の小さな街、高知で日々を精いっぱい送る中で人間関係に疲れ、挫折し、大きな悩みにぶつかり、逃げ場がなくなっている人ら、いろんな人の顔が浮かんだ。
 聖母は少女に「罪人のために祈りなさい」というメッセージを伝えたという。自分ではない、誰かのために−。世界には宗教を問わず、今この瞬間もそんな思いで祈っている人が多くいる。
 そんなことを言っても、目の前のことで苦しんでいる人には何の救いにもならないし、ありきたりの言葉に聞こえるかもしれない。それでも、人間はたった一人で生きているのではない。そう知ってほしいと強く思った。
 (広末智子)
 *高知新聞 3月6日(土) 話題に掲載されました。


ー ルルド巡礼センター −